伝統的な鍼灸におけるケア(≒施術・治療)とは、
虚(≒不足している)している臓腑経絡の正気を補い、
実(≒あまり過ぎている)している臓腑経絡の邪気を必要に応じて瀉し、
内因・外因・不内外因の影響が負担とならない
本来の健康な心身の働きを取り戻す後押しをして、
自らの力で自然に回復をさせること。
補は主に生命エネルギーの気を充填(チャージ)すること、
瀉は気(ときに血も)の整理整頓(必要に応じて断捨離も)すること。
人が一人として同じ人がいないようにケアもまたその人だけのもの、
手間ひまかけて自分を育てて健やかに。
「ほんとうの物語は、みんなそれぞれはてしない物語なんだ。」 コレアンダー氏は、壁にそって天井までぎっしり並んでいるたくさんの本を目で追った。それからパイプの柄でその方をさしながらことばをつづけた。 「ファンタージエンへの入口はいくらでもあるんだよ、きみ。そういう魔法の本は、もっともっとある。それに気がつかない人が多いんだ。つまり、そういう本を手にして読む人しだいなんだ。」 「それじゃ、はてしない物語は、人によってちがうんですか?」 「そう思うんだよ、おれは」コレアンダー氏は答えた。 「それに、ファンタージエンにいってもどってくるのは、本でだけじゃなくて、もっとほかのことでもできるんだ。きみも、やがて気がつくだろうがね。」 「そうですか?」バスチアンはうれしくなっていった。 「それなら、ぼく、月の子(モンデンキント)にもう一度会えるということになるけど、だれでも、一度しか会えないんでしょう?」 コレアンダー氏は身をかがめ、声をひそめていった。 「いいかい、ファンタージエンにいってきた、もの知りの年よりのいうことを、よく聞くんだよ!ファンタージェンではだれも知らない秘密が一つあるんだ。ようく考えれば、きみにもどうしてだかわかると思うがね。きみが月の子(モンデンキント)のところへもう一度度いくことはできない。これはそのとおりだ──月の子(モンデンキント)である間は、だ。しかし、新しい名前をさしあげることができれば、きみはまた幼ごころの君にお会いすることができる。何度でも、そしてそれは、そのつど、はじめてで、しかも一度きりのことなのだよ。」 コレアンダー氏のブルドッグのような顔が、一瞬、やさしく輝いた。若々しく、美しくさえ思わせる輝きだった。 ミヒャエル・エンデ著『はてしない物語』ⅩⅩⅥ 命の水 より
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